【制作史で読む】The Beatles「Chains」──13時間一発録りの日、4テイクで決着。“ジョージ初リード”を世に出した、白黒デビュー盤の要石カバー

「Chains」は『Please Please Me』の4曲目。
アルバムが始まってすぐに“カバー枠”が続く中で、ここで初めてジョージが前に出て歌う。この配置がデカい。

制作史の肝はシンプルに3つ。

  • 原曲はアメリカのガールグループ The Cookies(1962)。作者は Goffin & King
  • 1963年2月11日、あの“13時間マラソン録音”で 4テイク録って、最初のテイクがベスト扱いになる
  • 冒頭のハーモニカ、コーラスの掛け合い、そしてフェードアウトまで含めて「ライブバンドをスタジオに閉じ込めた」空気が残ってる

1) ざっくり年表(迷子防止)

  • 1962年:The Cookiesが「Chains」を発表(小ヒット。リバプールのバンドがこぞってカバーする土壌ができる)
  • 1963-02-11:ロンドンEMI(現Abbey Road)で『Please Please Me』用の大量録音日。「Chains」は 4テイク録音
  • 1963-02-25:アルバム編集作業で「Chains」は フェードアウト処理が確定
  • 1963-03-22:英『Please Please Me』発売(「Chains」収録)

2) 原曲の匂い:ガールグループ曲を“ビートルズのライブ曲”に変える技

「Chains」は、いわゆる“ブリル・ビルディング系”の職人ソング。
ガールグループが歌う前提の恋愛牢獄メタファー(見えない鎖で縛られる、みたいなやつ)で、曲としてはめちゃくちゃ分かりやすい。

ビートルズが上手いのは、ここを「輸入して丁寧に再現」じゃなく

  • コーラスを観客煽りの掛け合いにして
  • リズムを前に転がす
  • そして“歌詞の事情”より、演奏の勢いで押す

ってやり方で、いっぺん自分の持ち歌にするところ。


3) アルバムの中での役割:ジョージの“名刺”として置かれた4曲目

『Please Please Me』って、今聴くと「カバー多いな」ってなるけど、当時は逆に武器だった。
クラブで鍛えたセットを、ほぼそのまま一日で録って“今のビートルズ”を見せる盤。

その中で「Chains」は、完全に役割がある。

  • 1曲目:全員の勢い(I Saw Her Standing There)
  • 2~3曲目:歌と演奏の幅(Misery / Anna)
  • 4曲目:ジョージの登場(Chains)
  • 5曲目:リンゴの登場(Boys)

“誰が何できるか”を最速で見せる流れの中に、きっちり収まってる。


4) 1963-02-11:13時間マラソン録音の中で「4テイクで決める」強さ

この日、ビートルズは『Please Please Me』の大半をまとめて録る。
機材も制約が強い(基本は2トラック運用)から、凝った作り込みより

  • 一発で成立するアレンジ
  • 同じ部屋で同時に鳴らす
  • 勢いと精度のバランスで勝つ

って戦い方になる。

「Chains」は 4テイク録って、しかも最初のテイクがベスト扱い
これ、雑って意味じゃなくて「ライブで完成してた」ってことだ。


5) 音のポイント①:冒頭のハーモニカで“表情”を決める(ジョンの仕事)

この曲の入口は、ハーモニカが一瞬で空気を決める。
メロディの説明じゃなく、「この曲はこういう気分だ」を最初の数秒で刻む感じ。

初期ビートルズのハーモニカって、器用さより“匂い”で勝つんだよな。
「Chains」もまさにそれで、ここがあるだけで曲が“輸入曲”から“ビートルズの曲”に寄る。


6) 音のポイント②:ジョージの初期ボーカルが見える(上手さより“芯”)

ジョージのボーカルって、後年(『Abbey Road』期)みたいな余裕はまだ無い。
でも「Chains」では逆に、

  • 若さのまま前に出る
  • 声がちょい硬いのに、曲の真ん中は外さない
  • コーラスの支え(ジョン&ポール)が“壁”になって押し上げる

この構図が聴こえる。
“ボーカリストとして育つ前のジョージ”が、そのまま音源になってるのが価値だ。


7) 音のポイント③:リズム隊が淡々と強い(ドラムのハイハットが効く)

初期の「一発録り」曲って、派手に聴かせようとすると崩れる。
だからリズム隊は、必要以上に飾らず“転がし続ける”のが正解になる。

「Chains」はまさにその設計で、ドラムはキメよりグルーヴの維持が主役。
この“淡々と強い”感じが、アルバム全体の勢いを支えてる。


8) フェードアウトという編集:最後まで演奏してた“現場感”の名残

スタジオ録音なのに、曲がスパッと終わらずフェードアウトする。
これは「ライブで回してた」曲を、アルバム用に“形”へ落とすときの編集でもある。

当時の編集って、いまみたいに無限に直せる世界じゃない。
だからフェードアウトは、妥協じゃなく合理的な決着の付け方だったりする。


9) BBCで録り直され続けた理由:同じ曲でも“別テイク文化”があった

「Chains」はBBC音源が複数残ってるのも面白い。
当時BBCは、番組用に新録を求めることが多く、ビートルズは何度もスタジオで演り直した。

代表的には

  • 1963-01-16(Here We Go)
  • 1963-04-01(Side By Side)
  • 1963-06-17 / 1963-09-03(Pop Go The Beatles)

みたいに、短期間で何回も録る。
結果、「同じ曲なのにテンションとノリが違う」バージョンが残って、初期のライブ力が見える資料になった。


10) 聴き方ガイド(一般向け:ここだけ押さえりゃOK)

  • 冒頭のハーモニカ:一瞬で曲の色が決まる。まずここを味わえ
  • サビの掛け合い:主役ジョージ、支えジョン&ポールの“壁”が分かる
  • リズムの転がり:ドラムのキメじゃなく、走り続ける感じが初期の強み
  • BBC版も聴く:同じ曲の“現場差”が分かると、この曲の価値が上がる

まとめ(この曲の本質)

「Chains」は、
ガールグループの小ヒット曲を、ビートルズがライブ曲として吸収し、1963年2月11日のマラソン録音日に4テイクで刻み込んだ“ジョージ初リードの名刺曲”だ。

派手じゃない。だが、初期ビートルズの「現場で仕上げて、スタジオで勝つ」筋力がそのまま残ってる。


参考リンク(検証用)

  • Beatles Bible(曲ページ:録音日、4テイク、ハーモニカ、フェードアウト、BBC音源一覧)
    https://www.beatlesbible.com/songs/chains/
  • Beatles Bible(1963-02-11:Please Please Me大量録音日の概要)
    https://www.beatlesbible.com/1963/02/11/recording-please-please-me-lp/
  • Wikipedia(原曲:The Cookies版の概要)
    https://en.wikipedia.org/wiki/Chains_(Cookies_song)
  • The Beatles 公式(リリース日表記の確認用)
    https://www.thebeatles.com/chains
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