「I Can’t Quit You Baby」は、ツェッペリンのデビュー盤でいちばん“正統派ブルース”に見える。
でも、ただのブルース・カバーじゃない。
彼らはここで、ブルースの型を守ったまま、音のサイズを巨大化している。
制作史の肝はここ。
- 元曲はWillie Dixon作。オーティス・ラッシュ(Otis Rush)版で知られるブルースの定番
- ツェッペリンはデビュー作『Led Zeppelin』(1969)で取り上げ、引き算の美学で迫力を出した
- 録音は1968年、ロンドンのOlympic Studios制作期
- ライブでは展開が伸び、ギター即興の“器”として機能する(代表例が1969年のロイヤル・アルバート・ホール映像)
1) ざっくり年表(迷子防止)
- 1966:Otis Rushが「I Can’t Quit You Baby」を録音・発表(作者はWillie Dixon)
- 1968-10:ツェッペリンがデビュー作制作期に録音(Olympic Studios)
- 1969-01(米)/ 03(英):アルバム『Led Zeppelin』発売、収録
- 1969-01-09:ロイヤル・アルバート・ホールで演奏(後年映像で広まる)
2) 背景:デビュー盤で“ブルースの根”を見せつける配置
『Led Zeppelin』は、新時代のロックを鳴らすアルバムだ。
だが彼らは、「俺たちは突然変異だ」とは言わない。
代わりに、ブルースの根を正面から提示する。
それが「I Can’t Quit You Baby」。
- 伝統の型を理解している
- しかもその上で、音を巨大化できる
この“基礎体力”の見せ方がエグい。
3) 録音・制作の流れ(制作史の核心):足し算をせず、間で圧を出した
この曲の怖さは、派手な仕掛けがないこと。
- リフはシンプル
- 曲構造もブルースの王道
- なのに、音が重い
なぜ重いか。
- ボーナムのドラムが“叩きすぎない”
- JPJのベースが底を支え続ける
- ペイジのギターが間を作り、次の一撃を大きくする
つまりこれは、
音数の少なさで圧を出す演奏。
ブルースの“溜め”を、ロックの音圧に変換している。
4) クレジットと伝統:Willie Dixon作品を演る意味
Willie Dixonは、ブルースの核みたいな作曲家だ。
ツェッペリンがデビュー盤で彼の曲を複数取り上げたこと自体が、宣言になっている。
- 俺たちはこの伝統の上に立つ
- でもこのままにはしない
この曲は、その姿勢が一番ストレートに出る。
5) ライブでの育ち方:即興の器になる
スタジオ版は、比較的コンパクトで緊張がある。
でもライブでは、この曲は“広がる”。
- ギターが長く語る
- 強弱の幅がさらに大きくなる
- 同じ進行の中で、毎回別のドラマが起きる
特にロイヤル・アルバート・ホールの演奏は、
“ツェッペリンがブルースをどう巨大化したか”が見える代表例としてよく語られる。
6) 音の聴きどころ(一般向け)
- イントロの空気:最初から“間”が支配している
- ギターの一撃:速弾きじゃなく、言葉みたいに刺す
- リズム隊の重心:暴れないのに、落ちない。底が硬い
- ボーカルの粘り:派手に飾らず、感情を押し込む
まとめ(この曲の本質)
「I Can’t Quit You Baby」は、
ブルースの型を完璧に守ったまま、間と音圧で巨大化し、ツェッペリンの“基礎体力”をデビュー盤で証明した曲だ。
革新ってのは、奇抜なことじゃない。
伝統を理解した上で、別のサイズにしてしまうこと。
この曲は、それを静かにやってる。
参考リンク(検証用)
- https://en.wikipedia.org/wiki/I_Can%27t_Quit_You_Baby
- https://en.wikipedia.org/wiki/Led_Zeppelin_(album)
- https://en.wikipedia.org/wiki/Willie_Dixon
- https://www.ledzeppelin.com/
