「Black Mountain Side」は、レッド・ツェッペリンのデビュー盤の中で一番“異物”だ。
歌がない。爆音でもない。たった2分ちょい。
なのに印象は強烈で、フォーク×東洋趣味×ギター職人芸が一気に出る。
制作史の肝はここ。
- 1969年デビュー作『Led Zeppelin』収録のインスト。録音は 1968-10-15、ロンドンのOlympic Studios
- 伝承曲「Down by Blackwaterside」系の流れを、Bert Janschのアレンジに近い形で取り込み、ジミー・ペイジ名義で発表(後年ずっと議論の種)
- ペイジはDADGAD系チューニングで弾き、タブラを Viram Jasani が担当して“インドの気配”を付与
- ライブでは「White Summer」と繋げて演ることが多く、ステージ用の“導入儀式”にもなる
1) ざっくり年表(迷子防止)
- 1966:Bert Janschが「Blackwaterside(Down by Blackwaterside)」系を録音(『Jack Orion』)
- 1968-10-15:ツェッペリンが「Black Mountain Side」を録音(Olympic, London)
- 1969-01-12(米):アルバム『Led Zeppelin』発売、収録
- 1970-01-09:ロイヤル・アルバート・ホールでの演奏が映像でも知られる(後年DVD等で広まる)
2) 背景:デビュー盤で“重いロックだけじゃない”と見せつける配置
『Led Zeppelin』は、基本は攻撃力のアルバムだ。
でも、ずっと殴り続けるだけだと単調になる。
そこでこの曲が効く。
- ここで一度、空気を変える
- “英国フォーク”の血と“東洋趣味”を混ぜて、世界を広げる
- 次の流れ(アルバム全体の起伏)に陰影を作る
つまり「Black Mountain Side」は、短いのにアルバムの景色を変える役を担ってる。
3) 録音・制作の流れ(制作史の核心):DADGADとタブラで“異国感”を設計
この曲の面白さは、音の材料がはっきりしてること。
- ペイジのアコギは、DADGAD(系)で鳴らすことで“民謡っぽさ”が出る
- そこにタブラが入って、いきなり“英国フォークがインド寄りに歪む”
- しかも歌がないから、聴き手は音だけで景色を想像するしかない
要するにこれ、
編曲で世界観を作る曲なんだよ。
4) 元ネタとクレジット問題:この曲の影は、ずっと消えない
制作史として避けられないのが、元ネタの話だ。
- 伝承曲「Down by Blackwaterside」由来の系譜
- ギターの運びが、Bert Janschの「Blackwaterside」アレンジに近いと言われる
- それが“ペイジ単独クレジット”で出たことで、後年まで語られ続ける
ここは結論だけ筋を通す。
ツェッペリンは、伝統を吸い込んで巨大化した。
ただ、その吸い込み方が荒い瞬間があった。
「Black Mountain Side」は、その象徴のひとつとして残ってる。
5) ライブでの役割:「White Summer」と並べると“儀式”になる
スタジオ版は2分ちょいの小品。
でもライブでは、この系統のアコースティック曲が“間”として重要になる。
- 爆音のセットの中で、一度ステージの温度を変える
- 指の動きと空気で客を黙らせる
- そのまま「White Summer」へ繋げると、完全に異世界パートになる
短い曲なのに、ライブでは入口として強い。
6) 音の聴きどころ(一般向け)
- DADGADの響き:開放弦の鳴りで、民謡っぽさが立つ
- タブラの存在感:ドラムじゃ出せない“粒”が曲の表情を決める
- 歌がない強さ:メロディを歌わない分、情景が脳内に勝手に立つ
- 短さ:2分で世界を作って、さっと消える。余韻が残るタイプ
まとめ(この曲の本質)
「Black Mountain Side」は、
デビュー盤に“英国フォークとインド”をねじ込み、DADGADとタブラで異世界を作り、短いのにアルバムの景色を変えたインストだ。
そして同時に、
ロックが伝統を吸い込んだ時代の“影”も背負って残った。
小さい曲ほど、時代の匂いが濃い。
これはまさにそれ。
参考リンク(検証用)
- https://en.wikipedia.org/wiki/Black_Mountain_Side
- https://en.wikipedia.org/wiki/Led_Zeppelin_(album)
- https://www.ledzeppelin.com/
- https://acousticguitar.com/acoustic-classic-play-bert-janschs-arrangement-of-the-trad-tune-blackwaterside/
