【制作史で読む】David Bowie「The Man Who Sold the World」──“フォークの人”を脱ぎ捨てて、歪んだギターで別人に生まれ変わった。70年春のセッションで録られ、90年代の再発見で神話になった転換点

「The Man Who Sold the World」は、ボウイの“変身癖”が作品として決定的に形になった曲だ。
後のジギーやベルリン三部作ほど有名じゃない時期なのに、ここにはもう全部入ってる。

  • 不穏な寓話
  • ねじれたメロディ
  • ロック寄りへ踏み込む音作り

制作史の肝はここ。

  • 1970年アルバム『The Man Who Sold the World』のタイトル曲(ボウイの転換点)
  • 録音は 1970年春、ロンドンのトライデント周辺で行われ、バンド編成が“ハード寄り”に振れる
  • 当時は大ヒットではないが、後年のカバーや再発で評価が膨らみ続ける
  • 特に90年代以降、別世代の入口になって“神話化”が進む

1) ざっくり年表(迷子防止)

  • 1970年春:録音(アルバム制作期)
  • 1970-04-10(米):アルバム『The Man Who Sold the World』発売(米)
  • 1970-11-06(英):同アルバム発売(英)
  • 1993:NirvanaがMTV Unpluggedでカバーし、若い世代に再発見される
  • 後年:リマスターや再発で定番曲として固定

2) 背景:これは“別人になる”ための曲だ

1969年のボウイは「Space Oddity」で一気に名前が広がった。
だがあの路線を続けても、本人が納得しなかった。

そこで次に選んだのが、
フォーク寄りの世界から、より重いロックへ移ること。

「The Man Who Sold the World」は、その象徴。
歌詞の世界観も、曲の肌触りも、
“夢の歌”から“悪夢の寓話”へ振り切れている。


3) 録音・制作の流れ:バンドの熱で曲を“重くした”

この時期のボウイは、バンドの力を前面に借りている。
ギター、ベース、ドラムがグイグイ前へ出て、
曲をハードな方向へ押し込む。

ポイントは、プロダクションが豪華だから強いわけじゃないこと。

  • 音はむしろ生々しい
  • リフは整理されすぎていない
  • その分、曲の不穏さが増す

つまり「The Man Who Sold the World」は、
スタジオの魔法というより、バンドの圧力で成立している。


4) 歌詞の中身:寓話としての“自分との遭遇”

この曲はストーリーの体裁を取るが、
実際に言っていることは抽象的だ。

  • 自分に似た誰かと出会う
  • でもその相手は、自分の影のようでもある
  • 最後に残るのは、取り返しのつかない違和感

つまりこれは“誰かを売った”話じゃない。
自分自身を見失った話として読むのが筋が通る。

後のボウイは何度も人格を作っては捨てるが、
その原型がここにある。


5) 後年の再発見:90年代のカバーで“入口”になった

この曲が特別な存在になったのは、
初出の1970年より、むしろ後年だ。

90年代にNirvanaがアンプラグドで取り上げたことで、
「この不穏な曲は何だ?」と逆流が起きる。

結果、ボウイを知らない世代にとって、
この曲が“入口”になった。

つまりこの曲は、
時代を跨いで価値が増えたタイプの代表例だ。


6) 音の聴きどころ(一般向け)

  • ギターの歪み:洗練より不安。あえて整えない怖さ
  • メロディのねじれ:気持ちよく歌えそうで歌えない
  • サビの“落ち方”:盛り上がるのに救われない
  • 全体の不穏な温度:明るい未来が一切見えないのに、耳を離れない

まとめ(この曲の本質)

「The Man Who Sold the World」は、
ボウイが“フォークの人”を脱ぎ捨て、ロックの闇へ踏み込んだ転換点だ。

1970年春に録られた時点では、まだ“名曲扱い”ではなかった。
だが後年のカバーと再発見で、
世代を越える入口になり、神話になった。

変身できる奴が強い。
この曲は、その最初の証拠だ。


参考リンク(検証用)

  • https://en.wikipedia.org/wiki/The_Man_Who_Sold_the_World_(song)
  • https://en.wikipedia.org/wiki/The_Man_Who_Sold_the_World_(album)
  • https://en.wikipedia.org/wiki/MTV_Unplugged_in_New_York
  • https://www.davidbowie.com/the-man-who-sold-the-world
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