「The Man Who Sold the World」は、ボウイの“変身癖”が作品として決定的に形になった曲だ。
後のジギーやベルリン三部作ほど有名じゃない時期なのに、ここにはもう全部入ってる。
- 不穏な寓話
- ねじれたメロディ
- ロック寄りへ踏み込む音作り
制作史の肝はここ。
- 1970年アルバム『The Man Who Sold the World』のタイトル曲(ボウイの転換点)
- 録音は 1970年春、ロンドンのトライデント周辺で行われ、バンド編成が“ハード寄り”に振れる
- 当時は大ヒットではないが、後年のカバーや再発で評価が膨らみ続ける
- 特に90年代以降、別世代の入口になって“神話化”が進む
1) ざっくり年表(迷子防止)
- 1970年春:録音(アルバム制作期)
- 1970-04-10(米):アルバム『The Man Who Sold the World』発売(米)
- 1970-11-06(英):同アルバム発売(英)
- 1993:NirvanaがMTV Unpluggedでカバーし、若い世代に再発見される
- 後年:リマスターや再発で定番曲として固定
2) 背景:これは“別人になる”ための曲だ
1969年のボウイは「Space Oddity」で一気に名前が広がった。
だがあの路線を続けても、本人が納得しなかった。
そこで次に選んだのが、
フォーク寄りの世界から、より重いロックへ移ること。
「The Man Who Sold the World」は、その象徴。
歌詞の世界観も、曲の肌触りも、
“夢の歌”から“悪夢の寓話”へ振り切れている。
3) 録音・制作の流れ:バンドの熱で曲を“重くした”
この時期のボウイは、バンドの力を前面に借りている。
ギター、ベース、ドラムがグイグイ前へ出て、
曲をハードな方向へ押し込む。
ポイントは、プロダクションが豪華だから強いわけじゃないこと。
- 音はむしろ生々しい
- リフは整理されすぎていない
- その分、曲の不穏さが増す
つまり「The Man Who Sold the World」は、
スタジオの魔法というより、バンドの圧力で成立している。
4) 歌詞の中身:寓話としての“自分との遭遇”
この曲はストーリーの体裁を取るが、
実際に言っていることは抽象的だ。
- 自分に似た誰かと出会う
- でもその相手は、自分の影のようでもある
- 最後に残るのは、取り返しのつかない違和感
つまりこれは“誰かを売った”話じゃない。
自分自身を見失った話として読むのが筋が通る。
後のボウイは何度も人格を作っては捨てるが、
その原型がここにある。
5) 後年の再発見:90年代のカバーで“入口”になった
この曲が特別な存在になったのは、
初出の1970年より、むしろ後年だ。
90年代にNirvanaがアンプラグドで取り上げたことで、
「この不穏な曲は何だ?」と逆流が起きる。
結果、ボウイを知らない世代にとって、
この曲が“入口”になった。
つまりこの曲は、
時代を跨いで価値が増えたタイプの代表例だ。
6) 音の聴きどころ(一般向け)
- ギターの歪み:洗練より不安。あえて整えない怖さ
- メロディのねじれ:気持ちよく歌えそうで歌えない
- サビの“落ち方”:盛り上がるのに救われない
- 全体の不穏な温度:明るい未来が一切見えないのに、耳を離れない
まとめ(この曲の本質)
「The Man Who Sold the World」は、
ボウイが“フォークの人”を脱ぎ捨て、ロックの闇へ踏み込んだ転換点だ。
1970年春に録られた時点では、まだ“名曲扱い”ではなかった。
だが後年のカバーと再発見で、
世代を越える入口になり、神話になった。
変身できる奴が強い。
この曲は、その最初の証拠だ。
参考リンク(検証用)
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Man_Who_Sold_the_World_(song)
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Man_Who_Sold_the_World_(album)
- https://en.wikipedia.org/wiki/MTV_Unplugged_in_New_York
- https://www.davidbowie.com/the-man-who-sold-the-world
