「Birthday」は、ホワイト・アルバム(『The Beatles』)のSide 3の1曲目。
前の面のラストが「Julia」みたいな静けさなのに、次の瞬間いきなり「祝え!踊れ!」で突入してくる。
この落差がまず強い。
制作史で面白いのは、曲の成り立ちが“奇跡のひらめき”じゃなくて、むしろ逆で、
「今夜テレビで観たい映画がある → じゃあ先に適当な土台だけ録ろう → 観終わったら歌詞つけて完成させよう」っていう、超・現場発想なところだ。
1) ざっくり年表(迷子防止)
- 1968-09-18:アビー・ロード(EMI Studio Two)で作曲〜録音〜ミックスまで同日完結
- プロデューサー:Chris Thomas(ジョージ・マーティン不在の代役)
- エンジニア:Ken Scott
- 1968-11-22:英『The Beatles(ホワイト・アルバム)』発売(Side 3の1曲目)
2) そもそも何でこんな曲が生まれた?──“即席でも使える曲”を作りたかった
ポールの発言として残ってる趣旨が面白い。
「誕生日とかクリスマスみたいな題材は、良い曲なら毎年引っ張り出される」っていう発想があったらしい。
つまり「Birthday」は、内輪ノリのネタ曲じゃなくて、
- 何年経っても通用する題材(誕生日)
- 誰でも反応できる言葉(祝う・踊る・パーティ)
- ロックンロールの最短距離(リフとノリ)
この条件を満たす“使える曲”として、即席で組み上げた感じがある。
3) 1968-09-18:一晩で全部やる日(しかも途中で映画休憩する)
この日の動きが、制作史として最高にロック。
3-1) まずはリフから:ポールが先に来て、鳴らし始める
ポールが早めにスタジオへ来て、あのギターリフを鳴らし始める。
他のメンバーが揃うと、そのままジャムで形が固まっていく。
やってることは“計算された作曲”というより、リフを中心に現場で組み立てる方式。
3-2) 先に土台を録る:とにかくシンプルな12小節ブルースで回す
その夜は「これから映画が始まる」事情があって、細かい作り込みをする時間がない。
だから骨組みはかなり割り切って、12小節ブルースっぽいシンプルさで“走れる土台”を先に録る。
3-3) いったん離脱:ポールの家で映画『The Girl Can’t Help It』を見る
ここが伝説。
BBCで1956年のロック映画『The Girl Can’t Help It』が放送されていて、皆で観たい。
いったんスタジオを抜けて、ポールの家(近所)で観る。
制作の途中に「映画休憩」って、普通は破綻する流れなのに、この曲は逆に勢いが増す。
3-4) 戻って完成:歌詞とボーカル、コーラス、手拍子で“祝祭”を固定する
戻ってから歌詞とボーカルを乗せ、コーラスや手拍子で一気に“祝祭の顔”を作る。
この日、スタジオにはヨーコやパティ(Pattie)もいて、コーラスや手拍子に参加した記録がある。
4) 録音のディテール:20テイク→ベスト選定→8トラックへ移す “段取りの良さ”
この曲は「即席」だけど、録音現場は雑じゃない。
- 20テイク録る
- ベストとしてテイク19が選ばれる
- 4トラックを8トラックにコピーして(作業用テイクとして番号が付く)
- その上に歌や追加演奏を重ねて完成へ
さらに仕上げの味付けが面白い。
- ピアノをVoxアンプに通して歪ませる(祝祭なのに妙にガレてる理由がこれ)
- タンバリン、手拍子で“パーティの部屋”を作る
- 夜通し進んで、明け方にモノ・ミックスまで到達する
ジョンがコントロールルームのマイクでふざけたアナウンスを入れた、なんて逸話も残ってて、
徹夜のテンションがそのままテープに焼き付いてる。
5) 音の設計:短いのに“体が動く”理由
「Birthday」が強いのは、音の設計が徹底的に機能的だから。
- リフが主役:歌より先に体を動かす
- ドラム・ブレイクが長い:盛り上げの合図を“説明不要”にする
- コーラスが簡単:誰でも参加できる(ライブでも強い)
- 歪んだピアノ:ただ明るいだけじゃない、ガレージっぽい熱を足す
祝う歌なのに、妙に荒い。
ここがホワイト・アルバムらしい。
6) アルバム内の役割:Side 3の「空気をぶち壊すスイッチ」
ホワイト・アルバムって、曲順の落差が武器だ。
「Birthday」は、その落差を最大限に使う“スイッチ役”になってる。
静かな世界から、いきなりロックンロールの現場へ引きずり戻す。
この乱暴さが、アルバムの性格をよく表してる。
7) 聴き方ガイド(一般向け:ここだけ押さえりゃOK)
- 最初のリフで勝負が決まる:音量を上げると“開幕感”が分かる
- ドラム・ブレイクを数えてみろ:長さが気持ちよさに直結してる
- 歪んだピアノの質感に注目:祝祭なのに少し汚い、あの温度が白盤
- Side 2ラスト→Side 3頭で続けて聴く:落差がこの曲の一部
まとめ(この曲の本質)
「Birthday」は、
“今夜映画が観たい”という現場事情から、リフと12小節の土台を先に録り、映画休憩を挟んで歌詞と祝祭コーラスを乗せ、一晩で完成まで持っていった即席ロックだ。
即席なのに、アルバムの顔になる強さがある。
ビートルズの「現場力」が一番分かりやすく出てるタイプの1曲だ。
参考リンク(検証用)
- The Beatles 公式(基本データ)
https://www.thebeatles.com/birthday - Beatles Bible(1968-09-18 セッション詳細:20テイク/映画休憩/ミックスまで)
https://www.beatlesbible.com/1968/09/18/recording-mixing-birthday/ - Beatles Bible(曲ページ)
https://www.beatlesbible.com/songs/birthday/ - Wikipedia(概要整理)
https://en.wikipedia.org/wiki/Birthday_(Beatles_song)

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