【制作史で読む】The Beatles「Carry That Weight」──“重荷”を全員で歌う、アビー・ロード終盤組曲の心臓部(しかも最初はジョン不在で始まった)

「Carry That Weight」は『Abbey Road』B面メドレーの終盤、「Golden Slumbers → Carry That Weight → The End」へ流れ込む“背骨”みたいな曲だ。
短い(1分半ちょい)のに、役割がデカい。

制作史で熱いポイントはここ。

  • 最初の土台は 1969-07-02、しかも ジョン不在(事故で入院中)でスタート
  • 「重荷を背負っていく」ってフレーズを、4人全員のユニゾンで歌う(ビートルズ曲でもかなり珍しい)
  • 中間部で 「You Never Give Me Your Money」のモチーフを“別の言葉”で再登場させて、メドレーを一本に縫い合わせる
  • 仕上げで 大編成オーケストラまで突っ込んで、終幕へ押し上げる

1) ざっくり年表(迷子防止)

  • 1969-01-06:ゲットバック期(トゥイッケナム)で「Carry That Weight」原型を出す(当初はリンゴ向けの軽い案として出した、という記録もある)
  • 1969-07-02:アビー・ロードで「Golden Slumbers / Carry That Weight」基礎録音(15テイク)。ジョンは不在
  • 1969-07-03〜07-04:編集(つなぎ)とオーバーダブ継続
  • 1969-07-30〜07-31:メドレー全体の粗ミックス〜追加録音(ボーカルや打楽器など)
  • 1969-08-15:オーケストラ録音(メドレー終盤を“劇的”にする決定打)
  • 1969-09-26:英『Abbey Road』発売(B面メドレー終盤に収録)

2) 曲の正体:メドレーの“感情の重さ”を引き受けるパート

「Carry That Weight」って、単体で見ると歌詞も短いし、構造もシンプル。
でもメドレーの中では役割が明確だ。

  • 「Golden Slumbers」で“眠りの詩”みたいに落として
  • 「Carry That Weight」で“現実の重さ”をドンと乗せて
  • そのまま「The End」で“終幕”へ着地させる

要するに、「Carry That Weight」は “目が覚める瞬間の重さ”みたいな担当。


3) いきなり核心:この曲は“4人で歌う”から刺さる

この曲のサビ(ユニゾン部分)は、4人全員のボーカルが入ってるって扱いで語られることが多い。
ビートルズって、コーラスは分厚いけど「4人全員が同じラインを同時に歌う」って意外と少ない。

だからこそ、このユニゾンは“個”じゃなく“バンド”の声に聞こえる。
内容も「重荷を背負う」だろ?
個人の愚痴より、グループ全体の自白に聴こえてしまう。ここが強い。


4) 1969-07-02:ジョン不在で始まる“土台づくり”(15テイク)

制作史の味が濃いのはここだ。
「Golden Slumbers / Carry That Weight」の基本録音は 1969-07-02。この日はジョンが入院中で不在。
残りの3人で進める。

当日の役割の核はこんな感じで語られる。

  • ポール:ピアノ中心+ガイド歌
  • ジョージ:ベース
  • リンゴ:ドラム

で、15テイク回して土台を作る。
この時点で“メドレー終盤の骨格”がもう出来ていく。
不在なのに進むって事実が、1969年のビートルズっぽさでもある。


5) 07-03〜07-04:編集で“流れ”を作り、歌やギターを乗せて輪郭を固める

翌日以降は、テイクを整理して“使える形”にしていく工程。

  • どのテイクを本線にするか決める
  • 必要なら編集で繋ぐ
  • その上にボーカル/ギターを重ねて“作品”に寄せる

この曲は単体ヒット狙いじゃなく、メドレーの流れが命。
だから編集が“作曲の一部”みたいに機能してる。


6) 07-30〜07-31:メドレーとしての“縫い合わせ”が完成へ動く

7月末になると、メドレー全体を「一本の流れ」としてまとめる作業が本格化する。
この段階で「Carry That Weight」は、単なる1曲じゃなく

  • 前の「Golden Slumbers」から自然に入って
  • 次の「The End」へ“落とさず”に渡す

ための“接着剤”になっていく。

録音もこの時期に追加が入る。
ボーカルの厚み、打楽器、細部の押し出し…そういうのが最後に効いてくる。


7) 08-15:オーケストラで“重さ”を物理的に増やす(終幕の装置)

「Carry That Weight」は、メドレー終盤の一体パッケージとしてオーケストラが入る。
ここで曲がいきなり“劇場”になる。

ロックバンドの4人だけで「重い」って言っても、限界がある。
そこへストリングスやブラスの塊を足して、重さを物理的に増量してくる。
この発想が『Abbey Road』のプロ仕事。


8) 仕掛けがうまい:中間部で「You Never Give Me Your Money」を呼び戻す

この曲の“制作的に上手い所”は、サビだけじゃない。
途中で「You Never Give Me Your Money」の冒頭モチーフを、別の言葉でリプライズする。

これは単なる引用じゃなくて、

  • メドレーの前半で投げたテーマ(ビジネスのゴタゴタ/割れた現実)を
  • 終盤で“もう一回だけ”思い出させる

っていう、物語の回収なんだよ。
短いのに、アルバム全体の因縁を背負ってる。


9) “何の重荷か”問題:ビートルズ自身の重さ、過去の重さ、Appleの混沌

歌詞の意味は断言しすぎない方がいいが、語られ方としては大きくこの辺に寄る。

  • 「ビートルズであること」自体の重さ
  • グループとして築いた過去(成功の影)の重さ
  • 当時のApple周辺の混乱・ビジネス問題の重さ(ポールがこの方向で語ったことがある)

さらにジョンが「ポールが“俺たち全員”のことを歌ってる」ってニュアンスで触れた、という有名な話も残ってる。
だからこの曲、個人の告白に見えて、実は “グループの終盤の共同声明”みたいに響く。


10) 聴き方ガイド(一般向け:ここだけ押さえりゃOK)

  • 「Golden Slumbers」から続けて聴け
    単体より“流れ”で刺さる曲だ。
  • ユニゾンの圧を聴け
    4人の声が重なる瞬間、急に“個”が消えて“バンド”になる。
  • 中間部のリプライズを拾え
    「You Never Give Me Your Money」の亡霊が戻ってくる。ここがメドレーの縫い目。
  • オーケストラが入った瞬間の重量感
    ロックから“終幕音楽”へ変わる。ここが『Abbey Road』の美学。

まとめ(この曲の本質)

「Carry That Weight」は、
ジョン不在で土台を作り、後から全員の声とオーケストラで重さを増し、メドレー全体を一本に縫い上げるための“心臓部”になった曲だ。

短いのに、言ってることは重い。
そしてそれを、4人で歌う。
だからこの曲は、メドレーの中で一番“ビートルズそのもの”みたいに聞こえる。


参考リンク(検証用)

  • The Beatles 公式(曲ページ)
    https://www.thebeatles.com/carry-weight
  • Beatles Bible(曲ページ/07-02の録音概要)
    https://www.beatlesbible.com/songs/carry-that-weight/
  • Beatles Bible(1969-07-02 セッション)
    https://www.beatlesbible.com/1969/07/02/recording-her-majesty-golden-slumbers-carry-that-weight/
  • Beatles Bible(1969-07-03 編集・継続)
    https://www.beatlesbible.com/1969/07/03/recording-editing-golden-slumbers-carry-that-weight/
  • Beatles Bible(1969-07-04 継続)
    https://www.beatlesbible.com/1969/07/04/recording-golden-slumbers-carry-that-weight/
  • Wikipedia(モチーフのリプライズ/録音日レンジなど概要)
    https://en.wikipedia.org/wiki/Carry_That_Weight
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