【制作史で読む】The Beatles「And Your Bird Can Sing」──“お蔵入り→作り直し”で生まれた、二重リードのキラーフック

「And Your Bird Can Sing」は『Revolver』の中でも、2分ちょいで刺して終わる“短距離走”みたいな曲だ。
ただ、制作史を追うと意外なタイプで、これ 一回完成しかけたのに却下されて、数日後に作り直してる

さらに面白いのが、最初の録音は後年『Anthology 2』で出たんだけど、そこにはジョンとポールの爆笑が入ってる。
「名曲の裏に、現場の笑い崩れ」――このギャップがたまらん。


1) ざっくり年表(迷子防止)

  • 1966-04-20:最初の録音(テイク1–2)→ 方向性は“ジャングリー寄り”で、結局ボツ
  • 1966-04-26:作り直し(テイク3–13、ベストはテイク10)→ ここで“あの二重リード”が決定
  • 1966-06-20:米『Yesterday and Today』で先に登場(Capitol都合)
  • 1966-08-05:英『Revolver』で正式にアルバム収録
  • 1996:初回録音(爆笑入り)を『Anthology 2』で公式放出

2) そもそも何が狙いだった?──“バーズ風ジャングリー”からの方向転換

この曲、最初はかなり The Byrds(バーズ)っぽい「ジャラッ」としたギター感を意識してたと言われる。
1966年当時、英国側も米国側も“12弦のキラキラした音”が流行のど真ん中で、ビートルズがそこに反応しないはずがない。

ところが、4/20に録った最初の版は採用されず、4/26に作り直し。
結果として出来上がったのは、バーズ直球というより 二重リードギターが主役の、硬くて速いロックになった。

制作史のポイントはここで、
「似せる」から「自分の武器(ギターの掛け合い)に変換する」へ舵を切った曲なんだ。


3) 1966-04-20:最初の録音(テイク1–2)──“爆笑版”の正体

4/20のセッションで「And Your Bird Can Sing」はまず2テイク録られた。
この段階では、

  • まずリズムトラック(ギター+ドラム中心)を固める
  • その上にボーカルやハーモニー、タンバリン、ベースなどを重ねる

という流れで“曲としては形になっている”。

なのに、これが却下される。
そして後年、この最初の版が『Anthology 2』に収録されたんだが、ここで有名なのが ジョンとポールが歌いながら笑い崩れて収拾がつかないやつ。

ポイントは「何で笑ってるのか分からない」こと。
記録からは爆笑の原因が特定できない、とされてて、逆に“現場の空気”だけが生々しく残ってる。
名曲の裏側って、こういう瞬間が混ざってるのがリアルだ。


4) 1966-04-26:作り直し(テイク3–13)──勝ち筋が決まる日

4/26、ビートルズはこの曲を ゼロから作り直す
テイクは3〜13まで回し、ベストはテイク10。録音時間も夜中まで伸びた。

ここで決定打になったのが、あの 二重リードギターの“走るメロディ”
いわゆる「ハモるリード」で、曲の顔がイントロ〜間奏で一気に決まる。

この手のフレーズって、適当に弾いても“それっぽく”ならない。
2人(主にジョージとポール)がピッタリ噛み合わないと成立しないから、
作り直し=「ここを決めるため」だった可能性が高い。

そしてこの日の版に、

  • ジョンのリードボーカル
  • ポール&ジョージのハーモニー
  • 追加の楽器(必要な装飾)

をオーバーダブして完成。
短い曲なのに、詰めるところはきっちり詰めてる。


5) リリースがややこしい:英『Revolver』より先に、米国で出てしまう

制作史で外せないのが 英米の発売事情

英国の『Revolver』には普通に入ってるが、当時の米Capitolはアルバム曲を入れ替えるのが常態だった。
その結果、米『Revolver』ではレノン曲が数曲外されてしまい、
「And Your Bird Can Sing」は 米国では『Yesterday and Today』(1966/6/20)に先に収録される。

つまりこの曲、

  • 英国:アルバム『Revolver』の中で聴かれる曲
  • 米国:編集盤の一部として先に聴かれる曲

という、ちょっと変な出世をしてる。

同じ音源でも「置かれる場所」で印象が変わるタイプだから、アルバム文脈で聴き直すと味が変わるはず。


6) “歌詞の意味”は諸説あるが、制作史的にはここは脇役

この曲は「誰への皮肉なのか?」みたいな解釈が昔から多い。
ただ、制作史で一番重要なのは、そこじゃない。

この曲の勝ち筋は、
2分ちょいで走り抜けるテンポ感と、
二重リードギターの“磁力みたいなフレーズ”
言い切りのボーカルも含めて、「バンドの運動性能」を見せる曲なんだ。


7) 聴き比べガイド(一般向け:これだけでOK)

  • まずは『Revolver』収録の正規版
    イントロの二重リードが入った瞬間に勝負が決まる。短いのに満足感が高い。
  • 次に『Anthology 2』の初回録音(爆笑版)
    “ボツになった理由”を分析するというより、
    「スタジオが一瞬で崩壊する生々しさ」を味わうのが正しい。
  • 最後にヘッドホンで二重リードだけ追う
    2人が同じフレーズをなぞってるだけじゃなく、微妙に表情が違う。そこが快感。

まとめ(この曲の本質)

「And Your Bird Can Sing」は、
一度録って捨てて、数日後に“勝てる形”へ作り直した曲だ。

  • 4/20:ジャングリー寄りの初版(爆笑の空気ごと残る)
  • 4/26:作り直しで二重リードを固め、短距離で刺す曲に変換
  • 英米の発売事情で、聴かれ方まで分岐する

短いのに、制作史は濃い。
“完成品”の裏にある試行錯誤が見えるほど、あのイントロがもっと刺さるはずだ。


参考リンク(検証用)

  • 曲ページ(録音日・テイク・爆笑版の説明)
    https://www.beatlesbible.com/songs/and-your-bird-can-sing/
  • 1966-04-20 セッション詳細(初回録音)
    https://www.beatlesbible.com/1966/04/20/recording-mixing-and-your-bird-can-sing-taxman/
  • 1966-04-26 セッション詳細(作り直し/テイク10がベスト)
    https://www.beatlesbible.com/1966/04/26/recording-and-your-bird-can-sing/
  • 公式:曲ページ(英Revolver/米Yesterday and Todayの発売情報)
    https://www.thebeatles.com/and-your-bird-can-sing
  • Wikipedia(概要・編成やエピソードの整理に便利)
    https://en.wikipedia.org/wiki/And_Your_Bird_Can_Sing

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