「Dear Prudence」は『The Beatles(ホワイト・アルバム)』の序盤、「Back in the U.S.S.R.」の直後に置かれる“静かに始まって宇宙まで上がる”名曲だ。
優しい子守歌みたいなのに、後半はバンドが一段ずつせり上がって、気付いたら空が明るくなる。
制作史の肝はここ。
- インド(リシケシ)のアシュラムで、瞑想に没頭しすぎて引きこもったプルーデンス・ファローに向けた“外へ出ろ”ソング
- 1968年8月末、ホワイト・アルバム制作の真っ最中に録音。しかもこの時期はリンゴが一時離脱中
- だからドラムはリンゴじゃない。ポールが叩いたドラムが、妙にハマって曲の推進力を作ってる
- ジョンの指弾き(ドノヴァン直伝と言われがち)が、曲の“上昇装置”の土台になる
※著作権の都合で歌詞引用は基本しない。
1) ざっくり年表(迷子防止)
- 1968年春:インド・リシケシ滞在中に着想(瞑想仲間の出来事が直接のネタ)
- 1968-08-28:基本録音(バンドの土台を作る日)※リンゴ不在
- 1968-08-29〜08-30:オーバーダブで“上昇”を設計(ギター/コーラス/装飾音などを追加)
- 1968年10月:ミックス作業(ホワイト・アルバム全体の仕上げ期)
- 1968-11-22(英)/ 11-25(米):ホワイト・アルバム発売
2) 背景・逸話:リシケシの“引きこもり瞑想”が、歌になった
当時ビートルズはマハリシの元で瞑想修行中。
その中にいたプルーデンスは熱心すぎて、部屋にこもりがちになったと言われる。
そこでジョンがやったのが、説教じゃなく“歌で呼び出す”こと。
- 世界を救う思想でもない
- 誰かを叩く政治でもない
- ただ「外の光を見ろ」と言う
この“優しい圧”が曲の核になってる。
3) 曲の構造:最初から最後まで“上がり続ける”ように作ってある
「Dear Prudence」って、サビでドカン!じゃない。
代わりに、要素を一段ずつ足していく。
- 指弾きギターのパターンが、最初から“回転”してる
- コーラスが入って、空気が広がる
- ベースが太くなり、ドラムが前へ出る
- 最後は“バンド全体”が光の方向へ押し上げる
作曲というより、編曲と録音で上昇を設計した曲。
4) 1968-08-28:基本録音──リンゴ不在で、ポールのドラムが曲を引っ張る
この時期、リンゴは一時的にバンドを離れていてスタジオにいない。
だからこの曲(と「Back in the U.S.S.R.」)は、ドラムがリンゴじゃない。
ここが制作史の味。
- ポールのドラムは“リンゴの間”とは別物で、少し硬くて前へ行く
- その硬さが「Dear Prudence」の“上昇”と相性がいい
- ジョンのギターは、最初から最後まで回り続ける“機関”として機能する
結果、リンゴ不在というマイナスが、曲の個性に化けた。
5) 08-29〜08-30:オーバーダブで“空が開ける瞬間”を作る
完成版の気持ちよさは、後半にいくほど要素が整然と積み上がるところ。
これはオーバーダブの勝利だ。
- コーラスを重ねて、言葉を“風景”にする
- 追加ギターや装飾音で、旋律の隙間を埋める
- タンバリン等の小物で、音の粒を増やす
- 必要に応じてリダクション(まとめ録り)でトラックを捻出して、さらに積む
ホワイト・アルバムって荒れた現場の印象も強いけど、
この曲は「荒れ」を感じさせないレベルで丁寧に積んでる。
6) 指弾きギターの出どころ:ドノヴァン直伝説が“それっぽい”理由
よく語られるのが、インド滞在中にドノヴァンから教わった指弾きスタイルが種になった、って話。
真偽の細部はともかく、音を聴けば納得はできる。
- コードをジャカジャカ鳴らすんじゃなく
- 一音一音が“粒”で転がって
- それが延々と回転して、上昇を支える
「Dear Prudence」は、ギターがリズムであり、ハーモニーであり、装置なんだよ。
7) アルバム配置がズルい:U.S.S.R.の直後に置くことで“熱→光”の落差を作る
「Back in the U.S.S.R.」で最初に派手にぶん殴って、
次に「Dear Prudence」で静かに始める。
これ、並びとして強すぎる。
- うるさいロックの後に、静かな回転が来る
- でも静かなまま終わらず、最後は広がっていく
ホワイト・アルバム序盤の“ジェットコースター感”を一発で決める配置だ。
8) 聴き方ガイド(一般向け:ここだけ押さえりゃOK)
- 冒頭の指弾き:これが“上昇装置”のエンジン。まずここを聴け
- ドラムの手触り:リンゴじゃないからこそ出る硬さと推進力がある
- 後半の積み上げ:足される要素を数えると、気持ちよさの正体が分かる
- U.S.S.R.→Prudenceの流れ:単体より、並びで聴くと威力が倍
まとめ(この曲の本質)
「Dear Prudence」は、
インドでの実話(引きこもり瞑想)をきっかけに、指弾きギターで回転を作り、リンゴ不在のドラムすら味方にして、要素を積み上げながら“光へ上がっていく”ように完成させたホワイト・アルバム屈指の上昇曲だ。
優しいのに強い。
この両立が、1968年のビートルズの底力だ。
参考リンク(検証用)
- The Beatles 公式(曲ページ)
https://www.thebeatles.com/dear-prudence - Beatles Bible(曲ページ)
https://www.beatlesbible.com/songs/dear-prudence/ - Wikipedia(背景の整理)
https://en.wikipedia.org/wiki/Dear_Prudence
