【制作史で読む】The Beatles「Dizzy Miss Lizzy」──ラリー・ウィリアムズ愛の集大成。15分で録って、アルバムの“最後”にブチ込んだ「叫びのロックンロール」

「Dizzy Miss Lizzy」は『Help!』のラスト曲。
映画の余韻をきれいに締める…とかじゃない。むしろ逆で、最後に突然汗臭いロックンロールを叩きつけて終わる。

制作史の肝はここ。

  • 原曲は Larry Williams(1958)。ビートルズが大好きだった作家/歌い手の代表曲の一つ
  • 1965年のビートルズは多忙すぎて新曲量産がギリギリ。そこで頼れるのが“持ち歌カバー”
  • 録音は短時間決着で、ほぼライブ感のまま押し切る(この時期のビートルズにしては珍しい割り切り)
  • しかも英盤『Help!』では、これがアルバムの最後。あえてこの荒さで終えるのが最高に変

1) ざっくり年表(迷子防止)

  • 1958年:Larry Williams「Dizzy Miss Lizzy」発表(米R&Bの定番へ)
  • 1965-05-10:EMI(Abbey Road)でビートルズ版を録音(短時間で完了)
  • 1965年夏:映画『Help!』公開(曲自体は映画本編に主要使用ではなくアルバム収録枠)
  • 1965-08-06(英):アルバム『Help!』発売(ラスト曲が「Dizzy Miss Lizzy」)
  • 1965年:BBCでも演奏(「The Beatles (Invite You to Take a Ticket to Ride)」等の収録で残る)

2) 背景:なぜ1965年に“古いR&B”を録るのか?──答えは時間と体力

1965年のビートルズは、映画・ツアー・TV・新譜が同時進行で、制作スケジュールが地獄。
それでもアルバムを出さなきゃいけない。新曲だけで埋める余裕がない。

そこで効くのが、ハンブルク〜クラブ時代に鍛えた“持ち歌カバー”。
「Dizzy Miss Lizzy」みたいなラリー・ウィリアムズ系は、彼らの体に入ってるレパートリーで、短時間で“商品になる”強さがある。


3) ラリー・ウィリアムズ枠:ビートルズにとって特別な作家

ビートルズはラリー・ウィリアムズを何曲も録ってる。

  • Bad Boy
  • Slow Down
  • Dizzy Miss Lizzy

この系統は全部、ジョンの“叫び”が似合う。
で、ただの懐古じゃなく、1965年のビートルズがやると、演奏が太くて速い。

つまり「昔の曲」じゃなく、1965年の筋力で殴り直した曲になる。


4) 1965-05-10:短時間決着の録音──“丁寧さ”より“勢い”で勝つ日

この曲の録音は、いかにも「時間ない、でも録る、だから勝つ」タイプ。

  • 基本はほぼバンド一発の塊
  • 歌(ジョン)も、整えるより勢い優先
  • で、特徴的なギターの“うねり”が曲の表情を決める

この時期のビートルズって、本当はもっと実験的なこともできる。
でもこの曲は、実験じゃなく割り切りのプロ仕事


5) 音のポイント①:イントロのギター“うねり”が、曲の顔

「Dizzy Miss Lizzy」といえば、イントロのギター。
あの“波打つ”リフが、曲のテンションを最初に固定する。

テクニックとしては派手じゃない。
でも、同じフレーズを何度も叩くことで、

  • しつこさ
  • 追い込み
  • 逃げ場のなさ

が出て、ジョンのボーカルの“キレ”と噛み合う。


6) 音のポイント②:ジョンのボーカルは“歌う”より“叫ぶ”が正解

この曲は、丁寧に歌うとダサくなる。
ジョンの強みは、音程より先に“体温”で勝つところ。

  • 声が割れそうなギリギリ
  • でもバンドが崩れない
  • 結果、汗の匂いが出る

これが、ビートルズが“ロックバンド”だったことを思い出させる。


7) なぜ『Help!』のラストに置く?──映画のアルバムを、ライブで終える矛盾

『Help!』は映画のサントラ的側面もある。普通なら、最後は余韻のある曲で締めそうだ。

でも英盤は「Dizzy Miss Lizzy」で終わる。
この矛盾がいい。

  • 映画の洗練
  • 1965年のポップスター感
  • その全部をひっくり返して、最後にクラブ時代の殴り合いで終える

アルバムとしての“締まり”じゃなく、バンドとしての本性で終わってる。


8) BBC版が面白い:スタジオ盤より“現場感”が出る

この曲はBBCでも演奏してて、そっちの方がさらに荒い。
荒いけど、それが似合う曲だから問題ない。

  • テンポの押し引き
  • ジョンの声の荒れ方
  • ギターのリフの粘り

ここを見ると、「この曲はもともとライブ曲なんだな」が一発で分かる。


9) 聴き方ガイド(一般向け:ここだけ押さえりゃOK)

  • イントロのギター:ここでテンションが決まる。しつこさを楽しめ
  • ジョンの声:上手さじゃない。限界の体温を聴け
  • 同じリフの反復:飽きる前に終わる、絶妙な暴力
  • 『Help!』の最後として聴く:あえてこれで終える変さが最高

まとめ(この曲の本質)

「Dizzy Miss Lizzy」は、
ラリー・ウィリアムズ愛を短時間録音で叩きつけ、1965年の多忙な制作を“持ち歌カバーの筋力”で乗り切った、叫びのロックンロールだ。

そして『Help!』の最後に置いたことで、
ビートルズが最後まで“クラブ出身のバンド”だったことを証明して終わる。


参考リンク(検証用)

  • The Beatles 公式(曲ページ)
    https://www.thebeatles.com/dizzy-miss-lizzy
  • Beatles Bible(曲ページ)
    https://www.beatlesbible.com/songs/dizzy-miss-lizzy/
  • Beatles Bible(1965-05-10 セッション)
    https://www.beatlesbible.com/1965/05/10/recording-dizzy-miss-lizzy-bad-boy/
  • Wikipedia(原曲・リリース概要)
    https://en.wikipedia.org/wiki/Dizzy_Miss_Lizzy
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