「All Together Now」は、ビートルズの中でもかなり異色だ。
ノリは子ども向けの歌みたいに単純、でも制作史を追うと “1967年に完成してるのに、世に出るのは1969年” という回り道をしてる。
しかも、映画『Yellow Submarine』の中ではアニメだけじゃなく、ラストで本人たちが出てきて「さあ、みんなで」って感じで締める。
軽い曲なのに、裏側はちゃんと“ビートルズ運用”の匂いがするんだ。
- 1) ざっくり年表(迷子防止)
- 2) どんな曲として作られた?──“みんなで歌う”前提の設計
- 3) 1967-05-12:録音が一気に終わった日(しかもジョージ・マーティン不在)
- 4) テイク数は9回。短時間で“遊び”も詰め込む
- 5) 何で1967に録ったのに出なかった?──映画の都合とアルバムの都合
- 6) 映画『Yellow Submarine』での使われ方がズルい(2段構え)
- 7) 1969年:サントラ盤でようやく表舞台へ(でも扱いは少し複雑)
- 8) 1972年:ヨーロッパでシングル化(B面が「Hey Bulldog」って渋い)
- 9) 聴きどころ(一般向けに3つだけ)
- まとめ(この曲の本質)
- 参考リンク(検証用)
1) ざっくり年表(迷子防止)
- 1967-05-12:アビー・ロード(EMI)で録音・ミックスまで同日完了(6時間弱、全9テイク)
- 1968-07:映画『Yellow Submarine』公開(英国プレミアは7月)
- 1969-01:サントラ盤『Yellow Submarine』で正式リリース(米 1/13、英 1/17)
- 1972:一部ヨーロッパ諸国でシングル化(B面「Hey Bulldog」)
- 2013:ポールが自分のツアーで初めてこの曲をライブ披露(意外と遅い)
2) どんな曲として作られた?──“みんなで歌う”前提の設計
「All Together Now」は、最初から“聴かせる名曲”というより “一緒に口ずさませる曲”として作られてる。
ポール自身が語っているように、音楽ホール(ミュージックホール)的な「客に参加させる」伝統のノリがベースにある。
だから曲の構造もわかりやすい。
- 難しい展開はほぼない
- 反復が多い(覚えやすい)
- コール&レスポンス感が強い
- タイトルのフレーズ自体が“合図”になってる(ここで全員が合流できる)
この“わざと単純にしてる”感じ、実は作曲として強い。
3) 1967-05-12:録音が一気に終わった日(しかもジョージ・マーティン不在)
制作史で一番おいしいのはここ。
この曲、1967年5月12日の1セッションで完成してる。しかも 録音→オーバーダブ→ミックスまで同日。
さらに面白いのが、いつものプロデューサー ジョージ・マーティンが不在だったこと。
その穴を埋めたのが、エンジニアの ジェフ・エメリック。そして実質的にはポールが主導してまとめた、というニュアンスで語られることが多い。
「ビートルズ=マーティン」というイメージがある中で、
“いつもの監督がいない日に、軽い歌をサッと仕上げる” のが逆にリアルだ。
4) テイク数は9回。短時間で“遊び”も詰め込む
録音は全9テイク。最後のテイクが土台になり、そこへオーバーダブで仕上げていく。
セッション内容の定番ポイントはこんな感じ:
- 基本はアコギ中心(ポールとジョージ)
- ジョンはハーモニカも絡める
- リンゴはドラムに加えて、指シンバル(フィンガーシンバル/ジル)みたいな小物パーカッションも使う
- コーラスは“宴会”っぽい合唱で、誰が歌ってても成立する作り(実際「その場にいた人が入った」系の話も出る)
短い曲なのに、音の“ガヤ”が多くて楽しい。
ここが「子ども歌」っぽいのにチープじゃない理由。
5) 何で1967に録ったのに出なかった?──映画の都合とアルバムの都合
この曲は映画『Yellow Submarine』向けの新曲として1967年に録られている。
でも映画公開は1968年、サントラ盤は1969年。だからどうしてもタイムラグが出る。
それに当時のビートルズは、アルバムもシングルも“別物”として動かしてた時代。
「新曲を出すならアルバムの核に置くのか?」「映画用に取っておくのか?」みたいな整理が必要だった。
その結果、「All Together Now」は
完成 → 保留 → 映画で使われる → サントラで正式発表 という流れになった。
6) 映画『Yellow Submarine』での使われ方がズルい(2段構え)
この曲は映画の中で普通に流れるだけじゃない。
印象的なのは ラストの実写パート。
- アニメの流れの中で一度登場
- さらに最後、ビートルズ本人が実写で登場してこの曲を紹介する
- 画面には「All Together Now」の各国語表記が次々出てくる(“みんな一緒に”を視覚化してる)
曲の内容が“合唱の合図”だから、演出との相性が良すぎる。
映画を見た人の記憶に残りやすいのは、この“終わり方”がデカい。
7) 1969年:サントラ盤でようやく表舞台へ(でも扱いは少し複雑)
『Yellow Submarine』のアルバムは、ビートルズ曲が6曲+ジョージ・マーティンのオーケストラ面、という構成。
いわゆる「ビートルズの大作アルバム」ではなく、あくまで“サントラ”だ。
だから「All Together Now」も、シングル級の扱いではなく
“映画の1シーンを支える曲”として収録される。
ここが逆に効いてる。
大作の中だと埋もれる可能性があるのに、サントラだと「場面とセットで記憶される」から強い。
8) 1972年:ヨーロッパでシングル化(B面が「Hey Bulldog」って渋い)
地味に面白い後日談が、1972年にヨーロッパでシングルになったこと。
しかもB面が「Hey Bulldog」。
“子ども歌 × ゴリゴリのロック”の組み合わせで、かなりクセが強い。
この時点でビートルズはもう解散後だから、
「今さら何で?」って感じもあるが、逆に言えば
“曲として単体でも売れる” と判断されたってことでもある。
9) 聴きどころ(一般向けに3つだけ)
- 「合唱が入ってくる瞬間」
ここで曲の目的が一発で分かる。会場でも家でも“乗れる”ポイント。 - 小物のパーカッション(ガヤ感)
ただの童謡じゃなく、音が賑やかな“パーティー感”がある。 - 映画ラストを思い出して聴く
画面の多言語演出を知ってると、タイトルの意味が強くなる。
まとめ(この曲の本質)
「All Together Now」は、
1967年にサッと作って完成させた“参加型ソング”が、映画と一緒に1969年に回収された曲だ。
軽い。短い。単純。
なのに制作史を見ると、
- マーティン不在の日に一気に録って
- 映画の都合で寝かされ
- ラスト演出で記憶に焼き付けられ
- 後年にシングル化までされる
こういう“運用の強さ”がある。
だから今でも、聴くと自然に「一緒に口ずさむ側」に立たされる。
参考リンク(検証用)
- 録音日・9テイク・マーティン不在のセッション詳細(Beatles Bible)
https://www.beatlesbible.com/1967/05/12/recording-mixing-all-together-now/
https://www.beatlesbible.com/songs/all-together-now/ - 映画での使われ方(アニメ+実写/多言語表記)・リリース日(Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/All_Together_Now_(Beatles_song) - サントラ盤『Yellow Submarine』の発売月・構成(Wikipedia/公式)
https://en.wikipedia.org/wiki/Yellow_Submarine_(album)
https://www.thebeatles.com/sea-time

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